10の話

里仁の話

「援護寮へ行っても服薬指導にきてくれますか?」
まるで感情表現がなかった伊藤さまが、
薬務スタッフの私にこんな言葉をかけて、驚かせてくれました。
薬をきちんと飲んでいただくことは、病気の治療に不可欠なことですが、
執拗な確認が、患者さまを不愉快にさせてしまうことも少なくありません。
ですから、こんな患者さまの言葉は私たちに自信を与えてくれます。
里仁を訪れた私に、伊藤さまはまた話しかけてくれました。
「薬はきちんと飲んでいますから、安心してください」

入院中にシャンプーのお手伝いをした宮田さまが、援護寮・里仁に移りました。
私の名前を覚えてもらうのに丸2年かかった宮田さま。
見ると、床屋さんに行ってきた様子です。
「すごくかっこいい!」
私が声をかけると、宮田さまは、はにかんだような穏やかな笑顔で応えました。

そこには患者さまと看護師ではなく、人間どうしとして笑い合う瞬間がありました。

→ 精神障害者生活訓練施設・援護寮 里仁(りじん)

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