10の話

北辰の話

倉持さまは20代、統合失調症の患者さまです。
すぐに裸になってしまうので、服を着せるのもひと苦労です。
毎朝、私は倉持さまに「おはよう」と声をかけますが、返事はありません。
経過をゆっくり見守らなければならない病気です。
症状が改善に向かい、倉持さまは個室から大部屋に移りました。
倉持さまが、ほかの人たちとうまく交流できるようになったとき、
私にこう話しかけてくれました。
「あっちの部屋で僕が裸だったとき、必ず挨拶してくれたんだよね」
患者さまとの毎日には、感動の種をまいているようなふれあいがあります。

症状の変動で、ときどき病院を抜け出そうとする石川さまは、絵画療法を始めました。
「何かしている人」をテーマに描いたのは、ネギの植え込みをする自分の姿でした。
ていねいに描かれたその絵は、石川さまの真面目さと仕事への深い思いを、
私に教えてくれました。
いま、石川さまは元気になって退院されています。

→ 精神科急性期病院 北辰(ほくしん)

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